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組合ニュース(2024年度)第05号

都留文大 教職員組合ニュース
2025年1月12日発行 2024年度第5号

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学校教育法改正を求める3団体協議会の提案について
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今を去る10年前、2014(平成26)年、学校教育法が改正され、大学における学長の権限が大幅に強められました。改正についての文科省の通知によると「大学が,人材育成・イノベーションの拠点として,教育研究機能を最大限に発揮していくためには,学長のリーダーシップの下で、戦略的に大学を運営できるガバナンス体制を構築することが重要である」ことを趣旨としています。
 こうしたことから、国・公・私立大学のそれぞれの教職員組合三団体が2021(令和3)年に協議会をつくりこの改正の問題について検討を始めました。その結果この改正が、教員人事や学長選考において学内の意向が反映されにくくなり、信頼関係や牽制機能が低下したこと、トップダウンによる組織改編は中長期の教育研究のチャレンジや安定した学生教育を難しくし、教職員の負担増や教育研究力の低下を招いていることなどが問題点として浮かび上がりました。そして、これらは国立、私立、公立の設置形態を問わずあらわれていることが明らかになりました。

都留文科大学でも
 都留文科大学でも私自らの体験としてこんなことがありました。社会学科から地域社会学科への再編にあたって、当時、私は社会学科の学科長でしたが、「学科再編のプロセスに当該学科長をいっさい関わらせず、情報もほとんど与えない」「社会学科所属の三教員を新学科へ移らせない」という強権的な再編を当時の学長を始めとする執行部が進めました。
 この事件は他の問題もからめ当組合は中央労働委員会に救済を求めましたが、学科再編については「演習科目の選定及び選定された演習科目との適合性判断のいずれにおいても適切にされたとは言いがたい上に、その手続きも相当性を欠くものであって、教員の配属に係る人選が合理的であったとは認め難い」との認定を受け、その不当性が公式に認められました(中労委平成29<2017>年(不再)第29号 都留文科大学不当労働行為再審査事件 命令書全文 引用部分p.69)。
 こうしたことは2014(平成26)年学校教育法改正により当大学でも教授会での審議事項が大幅に狭められた結果、当時の執行部の「何でもできる」というように考えたあまりの横暴だったと思っています。実際、上記中労委審判のほか、教員から大学へ3件の裁判が起こされ、うち2件で教員側が勝利的和解をしています。

学校教育法改正の提案
 さて、話を戻しますと、協議会をつくったのは全大教(全国大学高専教職員組合)、私大教連(日本私立大学教職員組合連合)、本学教職員組合も加盟する公大連(全国公立大学教職員組合連合会)で、それぞれ国立大学、私立大学、公立大学の教職員組合が加盟する連合体となっています。約1年半で13回の会合を重ね、これらの弊害を改め、教育研究職員の自主的な参加による大学の活性化、教育の充実、研究力の強化をはかるためには、学長選考を教育研究職員の選挙によることを原則とすることや、教授会に審議の権限を付与すること等の法改正が必要であり、2023(平成5)年3月8日に共同で学校教育法改正案をとりまとめました。
 それが「大学教職員組合3団体による学校教育法改正の提案 ―教育と研究の基盤となる大学自治の回復をめざして―」です。2024(平成6)年3月にはシンポジウム「大学のあるべき姿を考える―より良い大学を実現するための学教法再改正提案―」を開催し議論を深めています。

改正提案の概要
 学校教育法第83条、第92条、第93条の改正提案を提起しています。ここでは、最も重要だと思われる教授会に関する第93条の改正案を紹介しましょう。
 改正案第93条では、まず「重要事項を審議するため、教授会を置かなければならない」として教授会が重要事項審議の機関であることをあらためて明確化するとともに、教育研究職員による専門的な判断が必要な重要事項8項目を列挙し、「意見を述べる」のではなく「教授会の審議」にかかるべき事項とすることを提案しています。

【改正提案】次の重要事項を審議するため、教授会を置かなければならない。
一 教員の人事
二 学生の入学、卒業及び課程の修了
三 学生の身分
四 学位の授与
五 教育課程の編成
六 学部・学科の改廃
七 学則の改定
八 その他教育研究に関する重要な事項

【現行学校教育法】大学に、教授会を置く。
2 教授会は、学長が次に掲げる事項について決定を行うに当たり意見を述べるものとする。
一 学生の入学、卒業及び課程の修了
二 学位の授与
三 前二号に掲げるもののほか、教育研究に関する重要な事項で、教授会の意見を聴くことが必要なものとして学長が定めるもの

 ちなみに、本学の規程ではここにあたる項目は以下になっており、学校教育法を踏襲しています。

【都留文科大学教授会規程】第3条 教授会は、学校教育法第93条第2項の規定に基づき、学長が次に掲げる事項について決定を行うに当たり意見を述べるものとする。
(1) 学生の入学、卒業及び修了に関すること。
(2) 学位の授与に関すること。
(3) 前各号に掲げるもののほか、教育研究に関する重要な事項で、教授会の意見を聴くことが必要なものとして学長が定めるものは、次のとおりとする。
 ア 教育課程の運用及び実施に関すること。
 イ~カ 略
2 略

(本学の規程はキャンパス外からはここから閲覧できます)。  

改正の実現に向けて
 三団体協議会は、引きつづき活動を続けており、今後普及活動のほか、国会議員に対する要請行動などを考えております。
 一方いろいろご意見をいただいており、大学の機能は複雑化しておりかつての教授会のようにほとんど全てを教授会で審議することは不可能、というような指摘もあります。そのような意見はもっともであり、今後、教育研究審議会でやること、教授会でやることの新たな仕訳が必要かと思っています。
 私個人としては、学科再編時に「当該学科長の意見を無視し(意見を聴く機会は確かにありましたが概ね「聴き置く」だけで全く受け容れられませんでした)、当該学科長をまったく蚊帳の外において学科再編をされてしまった学科長」というのがトラウマとして残っています。それも2014学校教育法改定を踏襲した教授会規程の改定に原因がある、と改めて認識しました。

 なお、学校教育法の改正提案、3団体協議会シンポジウムの内容はこちらのサイトから閲覧できますので、ぜひご覧下さい。

(委員長・公大連中央執行委員長 前田昭彦)

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これで組合ニュース第5号は終わりです。
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都留文科大学教職員組合ニュース
2025年1月12日発行
発行人:前田昭彦
編集人:青木深
https://union-tsuru.org/